短詩文芸である冠句紹介


by kanku_575
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やまざと No.596 八月号作品輯(平成22年)

やまざと No.596 八月号作品輯(平成22年)

芳冠録  橋本信水選(上位10句紹介)

 すべて吉  信じて生きる朝が来る   歌子

 すべて吉  一行にある父の戒     佐津子

 百日紅   流れる汗は歳の嵩     英子

 すべて吉  とことん填ってしまう賭け 早百合

 すべて吉  響き合う人に出会った日  初子

 百日紅   今年も鳴き切る油蝉    睦代

 すべて吉  清濁飲み込む大河とす   慶次

 百日紅   我が家の蝉を旅発たす   淑子

 百日紅   農夫彩雲見逃さず     萬郷

 百日紅   君を抱けばはにかみて   襷子

山麗抄   「メール来る」 浅田邦生選(三才五客)

 メール来る  満月の夜はただ一途    夕

 メール来る  山から海から届く声    佳津子

 メール来る  亡夫に貰う星月夜     風子


 メール来る  吐息こもらせ地下茶房   虚堂

 メール来る  数珠を袂にたつ始発    千秋

 メール来る  口では本音言えぬ人    厚史

 メール来る  動けぬ身体癒やす文字   直樹

 メール来る  嬉しいもので老いの恋   直樹

 選後感

 天「満月の夜」は、メールを受ける人の緊張感が的確に表現によって品位のある句になった。
 地「とどく声」は、メールの特性が生かされた広がりのある豊かな句。
 人「星月夜」は、冠題と附け句の関係が今ひとつ明確でないが、星月夜の追想が美しく
   切ない。

 集句を拝見して、附け句が冠題(あるいはメール)の説明に終わる句が多くみられたのは、
 日常生 活にメールが根差してしるとは言えない方が、多かったせいかも知れない。

山麗抄   「メール来る」 高階睦代選(三才五客)

 メール来る  ガンバレなどと言わぬ父  風子

 メール来る  節くれの手がふと語り   佐津子

 メール来る  やっぱり気に成る一人居を とみ子

 メール来る  父に一目置く息子     和子
 メール来る  亡夫に貰う星月夜     風子
 メール来る  やっばり宇宙の人だった  襷子
 メール来る  絆は太き記念の日     佐津子
 メール来る  もうハミングが止まらない 和子
 
 選後感
 冠題「メール来る」 いち早い電子伝達の戸惑いを感じ乍らも便利で確実さに動かされます。

 天位句 ほんの一行の中にも、相手に充分な思いやりの心を伝達する本意が伺い知れます。
 地位句 懸命に働いた太い指の先から、思いの丈が充分伝わってきます。
 人位句 一日一回来る元気メールは、やっぱりうれしいものです。

山映抄   「揺るぎなく」 深水虚堂選(三才五客)

 揺るぎなく  校碑に不滅の文字を読む  慶次

 揺るぎなく  生きざま語る鑿の跡    風子

 揺るぎなく  残像重さ愛も死も     祐子

 揺るぎなく  鎮魂の灯を基点とす    風子
 揺るぎなく  老化を遮断してる趣味   和子
 揺るぎなく  キャンドルライト視めてる 夕
 揺るぎなく  前へ前へ歩を進め     美則
 揺るぎなく  この友情は死の日まで   初子
 
 選後感
 一句十年と言われた時代に育った私は、今もって句会で一句選んで頂ければ御の字で帰る、
 欲のない道を歩んでいます。今回の「揺るぎなく」と言う冠題から附け句の取り合わせの、
 ものや言葉は「揺るがない」と言う意味を持つ単語や言葉を使った方が分かり易いのでは
 ないかと思います。不滅・鑿・残像・鎮魂・遮断・等特に飲酒に残り、三光、五客に選んで
 います。こらから先、発想の飛躍を期待すると共に、戦後の冠句史を一度学び直す必要が
 あるのではないかと思っています。

山映抄   「揺るぎなく」 平松直樹選(三才五客)

 揺るぎなく  やんわり照らす和蝋燭   怜子

 揺るぎなく  生きざま語る鑿の跡    風子

 揺るぎなく  苔生す詩碑の百の列    多津子

 揺るぎなく  ビクともしない父の背な  早百合
 揺るぎなく  次々盆の客ありて     依子
 揺るぎなく  男の背中燃えている    真弓
 揺るぎなく  家族が一つになる家訓   和代
 揺るぎなく  生きた証の農日記     咲枝
 
 選後感
 「揺るぎなく」百三十二句、有難うございます。
 暑さのせいか秀句ばかりで揺れに揺れての選となりました。
 天・古来より日本の灯りが人を照らし続けます。「やんわりと」...
 地・頑として譲らぬ父の背中を見続けて、逞しく生きていかれるのでしょう。
 人・人は悲しみにつけ喜びにつけ、昔も今も詩を愛し続けていくでしょう。

錦里抄   「里の盆」 田中歌子選(三才五客)

 里の盆    父母の存在身に沁みて   佐津子

 里の盆    やさしく迎う山と川    美則

 里の盆    満ち足りている笑い声   風子

 里の盆    語り継ぎおく佳き家訓   淑子
 里の盆    澄んだ詩情のある山河   風子
 里の盆    掛けた写真に歴史あり   紀美子
 里の盆    俺のルーツはここにあり  雄飛
 里の盆    家の献立変わらない    裕子

 選後感
 今年の夏は夜になっても暑い日がつづきました。里に帰ってのお盆は、自然も大きく
 父母の存在も大きいのは、皆同じ。久しぶりに過ごされた里の盆の様子をたくさん
 読ませて頂きました。

錦里抄   「里の盆」 佐野真弓選(三才五客)

 里の盆    欲を捨てろと蓮の花    玲子

 里の盆    想いを寄せる遠花火    佐津子

 里の盆    柱の傷がよくしゃべり   佐津子

 里の盆    五感歓喜の声あげる    和子
 里の盆    まだ笑み消えぬ残照か   好美
 里の盆    向日葵みれば母がいて   夕
 里の盆    断ち切れない至福酔う   すず
 里の盆    歩み行く道照らす亡母   かよ子
 
 選後感
 里の盆 132句いただきました。
 猛暑のお盆の帰省は、大変だったと思います。年に一度の大食事会、子や孫の笑顔に
 言葉はいらないとと思います。今年も元気で会えた喜び、本当に嬉しいものです。
 早朝の涼しさに身も心もほっとしています。

錦里抄   「里の盆」 森元喜代子選(三才五客)

 里の盆    五感歓喜の声あげる    和子

 里の盆    主役の遺影は微笑んで   多津子

 里の盆    魂集まり過去灯す     啓二

 里の盆    反る程畳干してあり    和代
 里の盆    絆たしかむ後幾度     咲枝
 里の盆    孫が肩貸す墓参り     慶次
 里の盆    語り継ぎおく佳き家訓   淑子
 里の盆    規制の風が身を焦がす   陸代子
 
 選後感
 里の盆 132句を勉強させていただきました。
 私には荷が重くて、他の二名の先輩さんに甘えさせてもらいたいと思います。
 私なりの選になりましたことお許しください。
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by kanku_575 | 2010-09-30 10:00 |  やまざと誌