短詩文芸である冠句紹介


by kanku_575
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2010年 10月 30日 ( 1 )

やまざと No.597 九月号作品輯(平成22年)

芳冠録  橋本信水選(上位10句紹介)

 地虫鳴く  執念の瞳次期目指す    小百合

 姿消す   どんどん遠くなる昭和   萬郷

 地虫鳴く  人のぬくもりある郷に   栄

 地虫鳴く  人間だけが懲りもせず   ひろ子

 姿消す   この世をすべて天寿せり  裕美

 姿消す   風より軽い骨拾う     夢月

 地虫鳴く  粘り強さで書く句稿    淑子

 姿消す   生きとし生ける業なれば  佐津子

 姿消す   根性の字が読めぬ子等   風子

 地虫鳴く  守り続ける痩せ畑     祐子

文芸塔賞記念

雲も秋  平松直樹選(三才五客)

 雲も秋   終わりが見えぬ道に立つ    優葉

 雲も秋   野良着茜の陽に染まる     風子

 雲も秋   錦はないが母が待つ      怜子

 雲も秋   締め直してる靴の紐      歌子
 雲も秋   画布に朱を足す未来地図    怜子
 雲も秋   故郷恋し祭り笛        初子
 雲も秋   我を呼んでる道祖神      美則 
 雲も秋   妙に気になる先のこと     和子

 選後感

 天位 困難な夢、治らぬ病などに立ち向かう、不断の意を感じます。

 地位 一生懸命生きてきた汗、「ごくろうさま」と声を掛けたい。

 人位 母に元気な姿を見せて安心させたいという、気持ちがすがすがしい。

山麗抄

眼が光る  藤原萬郷選(三才五客)

 眼が光る 父の背中は広かりき    和代
 
 眼が光る 菩薩も夜又も使い分け   夢月
 
 眼が光る 床のダルマに一喝され   好美

 眼が光る 躓いた石なにを指す    すず
 眼が光る 悪女になれぬ星の夜    優葉
 眼が光る 闘志燃やして炎の坩堝   初子
 眼が光る 不意を突かれた妻の槍   怜子
 眼が光る 黒光りした父の顔     とみ子

選後感
 「眼が光る」のとらえ方に、外からのものと自分の内側からと有ると思う。
 仁王門を思わせる句が三・四句有り、是はズバリ前者(外側)のとらえ方。
 後者の目線の佳吟が多かったと思う。

 二句の添削多謝。           萬郷


眼が光る  秋真琴選(三才五客)

 眼が光る 正論邪心を撥ね返す    風子
 
 眼が光る 王手のかかるその一手   小百合
 
 眼が光る 少年の夢一直線      慶次

 眼が光る タイトル狙う挑戦者    雄飛
 眼が光る 背信うずく仁王前     多津子
 眼が光る 譲れぬ一歩父の杭     睦代
 眼が光る さあ、どうなるか一騎打ち すず
 眼が光る いたずら好きな孫が来た  鹿の子

選後感
 難しい選でした。眼が光る、眼が潤む、眼が輝く、この違いは判りますが..潤むでも涙で光るとなれば、又、輝くも、光っているのだから、そのどちらでも光るまで良いのか...。とうとう締切日までなやんで、以上の選になりました。それと私などがしてはいけないと思い乍ら、少し替えてしまいました。作者の方には判って頂けると嬉しいのですが、一度原句と突き合わせてみて下さい。一生懸命やりましたが、つたない選で申し訳ありません。放蕩にご免なさい。
                                      真琴

山映抄

風だより  篠原和子選(三才五客)

 風だより 舵取り直す翁あり     欅子
 
 風だより 器の大きな人となる    和代
 
 風だより 明るいニュースとびこんで 裕美

 風だより 恋のうわさが飛んで来る  さち
 風だより 昔の恋人まだ一人     恒男
 風だより 醜聞拡がる里の葬     祐子
 風だより 気になる人の認知症    咲枝
 風だより 疲れ癒した峠茶屋     美保子

選後感
 太陽のいたずら好きも、お彼岸は覚えていた様です。やっと凌ぎよくなって参りました。
 これからは灯下に親しんで、沢山の冠句を作らねばと、意を強くしています。

 天位句 改造内閣が発足し、これからが期待されますが、地域にも必ず舵取りの上手な
     お年寄りは居ます。
 地位句 郷を離れて住んでいると、故郷のことが気になるものです。好きだった人の
     噂を聞いてほっとして...
 人位句 近頃は、悪いニュースばかりが耳に入ってきますが、明るいニュースはいいですね。

風だより  藤原小百合選(三才五客)

 風だより 山麓の故郷沈むとか    初子
 
 風だより 深い想いが今消える    萬郷
 
 風だより 共に学んだ友忍ぶ     英子

 風だより 器の大きな人となる    和代
 風だより 心揺らした人如何に    千秋
 風だより 上手く不況乗り越えて   真弓
 風だより 故郷に帰す人待ちわびる  好美
 風だより 海を渡りし友は今     美保子

選後感
 
 天 何とも言いようのないむなしさ淋しさ。
 地 ひそかに心の片隅に抱いていた想いを、断ち切る時が来た。
 人 振り返ればいろいろな想い出が錯綜する。

 有りがとうございました。

錦里抄

稔りの夜  田路和代選(三才五客)

 稔りの夜 農を誇りに生きる父    小百合
 
 稔りの夜 轍に重荷降ろす母     多津子
 
 稔りの夜 深き祈りを田の神に    くにゑ

 稔りの夜 豊穣の月揺るぎなく    睦代
 稔りの夜 翻弄されずきた人生    好美
 稔りの夜 女ごころを皿に盛る    英子
 稔りの夜 挫折繋いだ橋いくつ    佐津子
 稔りの夜 初心忘れずきた人生    佐津子

選後評
 農業もなかなか難しい時代です。
高齢による離農者や、耕作面積の制限により荒れた農地の多い中、「稔りの夜」で頑張って
居られる人達の多い事も、再認識出来た私です。
 父を詠まれた句が多いですが、地位の句の、長らく女手で守り抜いた農を、やっと後継者に
引き継がれて...。母への労いの気持ちに込み上げるものが有りました。

稔りの夜  山根風子選(三才五客)

天  稔りの夜 創傷いえし風呂溢る    恵羊
 
地  稔りの夜 初心忘れずきた人生    佐津子
 
人  稔りの夜 どの家も明るき灯を灯し  初子

客止 稔りの夜 耐えればきっと光ある   優葉
客2 稔りの夜 深き祈りを田の神に    くにゑ
客3 稔りの夜 豊饒の月揺るぎなく    睦代
客4 稔りの夜 頭下げたい人が居る    咲枝
客5 稔りの夜 父の笑顔は一級品     かよ子

選後評
日本の美しい原風景の稲田。しみじみと月に虫の音、酒に浸れる秋の夜長。「稔りの秋」120句
いただきました。三才は作者のお顔が思い浮かび、秀句十句は、それぞれの稔りへの感情がよく
伝わってきました。佳に順位はありません。十七句が、まるで連句の様に対句の様に呼応し合い
”やまざと”の大きなドラマが誕生いたしました。
楽しい選をさせて頂き、ありがとうございました。
                               風子

稔りの夜  藤中雄飛選(三才五客)

天  稔りの夜 おんなごころを皿に盛る  英子
 
地  稔りの夜 挫折繋いだ橋いくつ    佐津子
 
人  稔りの夜 祭りの孫を主座に於く   慶次

客止 稔りの夜 労働厭わなぬ父の背な   怜子
客2 稔りの夜 間違いなかった父の轍   佐津子
客3 稔りの夜 父の足跡確と継ぐ     英子
客4 稔りの夜 父の青春旅果てず     真弓
客5 稔りの夜 一合の酒父酔わす     真弓

選後感
殆んどの句が父、酒、収穫の喜びを表現した内容でした。天・地・人は視点のユニークさが
感じられ、特に天位は、奥行きが深く群を抜いています。
日本の農業問題に関する句が少ないのは、少し残念な気がしました。
                                   雄飛

互選「上り坂」 上位十句

四十二点  上り坂 どん底で見た陽の光り    信水
 
三十八点  上り坂 大樹は強く根を張りて    萬郷
 
三十七点  上り坂 躓く石のある覚悟      佐津子

三十四点  上り坂 父の背中を見失わず     とし子
三十三点  上り坂 靴紐しめる老いの意地    かよ子
三十一点  上り坂 息整える喜寿の朝      くにゑ
三十一点  上り坂 軌道に乗せたこの快挙    すず
二十八点  上り坂 夢へ一気に加速する     風子
二十八点  上り坂 決断迫る雲の峰       風子
二十八点  上り坂 後押す妻に応えねば     信水
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by kanku_575 | 2010-10-30 10:00 |  やまざと誌